中国・本の情報館~東方書店~
サイト内検索
カートを見る
ログイン ヘルプ お問い合わせ
トップページ 輸入書 国内書 輸入雑誌  
本を探す 検索 ≫詳細検索
東方書店楽天市場店「東方書店plus」
楽天市場店 東方書店plus
 
各種SNS
X東方書店東方書店
X東京店東京店
X楽天市場店楽天市場店
Instagram東方書店東方書店
Facebook東京店東京店
 
Knowledge Worker
個人向け電子書籍販売
 
BOOK TOWN じんぼう
神保町の書店在庫を横断検索
 
日本ビジネス中国語学会
 
北京便り
上海便り
ネット用語から読み解く中国
 
bei_title  
 
 
 
   
2010年07月  村上春樹の『1Q84』
 中国本土版の評判は?
   
   

日本を上回る売れ行きの『1Q84』中国語版作家・村上春樹のベストセラー長編小説『1Q84』の中国本土版(BOOK1=第1巻)がこのほど、南海出版公司から発売された。
村上春樹の作品は、中国でも都市部の若者を中心に人気を集めている。
同「BOOK1」の初版の発行部数は、中国本土では破格の待遇となる120万部(中国メディア)。北京では発売早々、地元の人気紙『新京報』が発表する週間ベストセラー(6月10日~16日)の第1位に躍り出るなど、売れ行きを伸ばしている。
では、実際に作品はどう受け止められているのか? 『1Q84』をとりまく状況や、中国メディアやネット上に見られる評判を追った。

   
 

■版権料は100万ドル!?

『1Q84』は日本で昨年5月にBOOK1と2が発売されて以来、今年4月発売の「BOOK3」までの発行部数が合計300万部を突破。BOOK1と2はアメリカ、イギリス、フランスなど世界40カ国・地域で翻訳出版されており、中国本土では台湾で出版された繁体字版をもとにした海賊版が出回っていた。
さらに中国本土でもベストセラーが確実視されていただけに、「簡体字版」版権取得の争奪戦が繰り広げられていたようだ。
これを獲得したのが北京の出版販売企画会社「新経典文化有限公司」。中国紙が「ある消息筋の話」として伝えたところによれば、「版権料は100万ドル(約9000万円)に上った」という(『中国青年報』4月15日付)。
数年前、中国初の版権オークションで、アモイ大学教授でテレビの人気講師・易中天の『品三国』に500万元(1元は現在約13円、約6500万円)もの高額アドバンスがついて話題になったが(「北京便り」2007年1月号)、それと比べても『1Q84』は格上の扱いであったことがわかる。

http://www.toho-shoten.co.jp/beijing/bj200701.html

■ノーベル賞から遠ざかる!?

平積みされた『1Q84』 隣はジョージ・オーウェルの『1984』物語は、ジョージ・オーウェルの未来小説『1984年』にインスピレーションを得たという。
舞台は1984年の東京。殺し屋の女性「青豆」と小説家の卵「天吾」は10歳の時に出会い、離れ離れになっていたが、それぞれが同じカルト教団につながる別の活動に巻き込まれていく。地下鉄サリン事件をベースに、DV、児童虐待、宗教的盲信、連続殺人など、現代社会の病巣ともいえる諸問題を複雑に絡み合わせた“カオス的時代”を描いた長編小説だ。
中国で市場に出回り約1カ月。実際のところ、本書はどう評価されているのだろう?

北京でこのほど開かれた『1Q84』出版記念会に出席した書評家の止庵氏は「(村上春樹の)後期作品には世界への関心が表されており、(彼は)責任を負った作家に変わったようだ。そんな彼の関心は、60年前にオーウェルが抱いた社会への関心と同じ流れを汲むものだ」。
また同記念会で司会を担当した文化人、梁文道氏は「作品のスタイルには変化が見られ、『1Q84』ではある頂点に達している(中略)。早期作品では読者に向けて夢を描いていたが、『1Q84』には非常に批判力がある」と語り、社会派作品としての『1Q84』にそれぞれ最大の賛辞を送る(『新京報』5月26日付)。

北京の大衆紙『京華時報』(4月14日付)は伝聞の形をとりながら、本書が「作家生活30年の村上春樹が、成熟段階に達した集大成の作品である」と高く評価。
「登場人物がより多く、年齢層は出生から死亡まで。現実と超現実を描く手法をとり、推理小説、歴史小説、ラブストーリーを結合させた多方面から解読し楽しむことのできる総合小説だ」と賞賛している。

これに対し、中国本土で村上作品の翻訳を最も多く手がけてきた林少華氏は、今回の翻訳を施小煒氏(翻訳家、日本文学研究家)に譲ったことからか、無念さをにじませている(『新京報』5月27日付)。
「人生には心残りがつきもので、それがなければ人生ではない。(中略)『1Q84』の翻訳チャンスを逃したのは、残念であったと認めなければならないだろう」
作品に対しては「(作者が)今の日本の社会問題に対する、総括的理解を示したものだ。数多くの社会問題を通して、世界の現状と人類が行きつく不安や思考を表している」と評価。
一方で、作品全体に従来にはないカルト的集団に対する“共感”が見られ、それが理想主義的な文学者に授与されることの多い「ノーベル文学賞」を作家から遠ざける要因になるのではないか、と辛口の論評も。
林少華氏の負け惜しみではないだろうが、確かに犯罪者である主人公らがカルト教団に関わり(単純にはいいきれないが)それに理解を示すという設定は、「人類の進歩、発展、人道主義」といった理想主義を求めるノーベル文学賞とは相容れないのかもしれない。

■万人に受け入れられる“総合小説”

中国語版『1Q84』BOOK1の表紙。BOOK2も6月下旬には刊行の予定。今回、『1Q84』の簡体字版の翻訳を任されたのは、施小煒氏。「村上作品をセンスよく訳している」と評される林少華氏に対して、施氏は原作に忠実な翻訳家として抜擢された。これまでに村上春樹の『走ることについて語るときに僕の語ること』や川上弘美の『センセイの鞄』などの作品を中国語訳している。
林氏の“ハルキ作品”と比較されることに対して、施氏は「100人の訳者には100通りの訳文がある。翻訳は、異なる声(翻訳)を認めることが大事で、完璧な訳というのはありえない」と真情を吐露している(『新京報』5月26日付)。
翻訳作業中は、長く激しい腰痛に見舞われ、ベッドに横になりながらも「1ページごとが挑戦だ。満足のいく作品にしたい」とパソコンを叩き続けた。
物語に対しては、青豆と天吾の「恋愛小説」と戦後日本の「思想進化史」を2つの主軸に、さらには「性のテーマ」を伏線にしている。筆致からいえば「推理小説」として読むこともできると捉えている。
「つまり、村上春樹は自分の思索を万人に受け入れられる、読み応えのある文章にした。異なる読者が、異なる意義をそれぞれに見出せる小説なのだ」とその重層的なおもしろさを分析している。

ネット上の掲示板「春樹バー」などのファンサイトでは、読者の賛否両論が飛び交っている。
「半分読んだけど、なんだかボンヤリしていてよくわからない。多くの出来事が奇異な感じ」
「これは村上の書き損ない小説では? 冗漫だし、中盤はとくに、簡単なプロットに大量の文字を浪費している。文字数稼ぎなんじゃ?とすら思える」
などという否定論もあれば、
「読めば読むほどおもしろい。BOOK2が待ち遠しくてならない」
「(中盤は)青豆の心の中の葛藤や渇望が、プレッシャーから開放された感じがよく表されている。小説でしょう。(前者は)あら探しをしているんじゃないの?」
といった肯定論も。もっとも「BOOK1」だけでは結末に至らないため、評価しきれないということもあるのだろう。

南海出版公司によれば、続く「BOOK2」は6月末には書店に並び、「BOOK3」も現在、施小煒氏が急ぎ翻訳中だとか。
まずは中国でも、翻訳小説としては異例の注目を集めている『1Q84』。
長編の総合大作だけに、中国での反応も広く、長い目で見る必要がありそうだ。

 
   
   
bestsellere
総合
 

★『新京報』図書ベスト
(北京図書大廈、王府井書店、中関村図書大廈、三聯書店など、市内主要書店やネット書店のデータから統計)
2010年6月10日~6月16日

     
第3位:『色眼再識人』

第4位:『藏地密碼8』

第6位:『低碳生活指南』

第7位:『九種体質使用手冊』

第8位:『大懸疑』

第9位:『歴史是個什麼玩意兒3』

第10位:『老実贏天下:趙章光評伝』
 

1.『1Q84 BOOK1』
村上春樹・著(日) 施小煒・訳 南海出版公司 2010年5月初版


中国の村上春樹ファン待望の『1Q84』簡体字版の登場だ。BOOK1の初版の発行部数は120万部(中国メディア)。
発売早々、『新京報』の週間ベストセラーでは第2位(5月27日~6月2日)を記録、6月中旬は第1位(6月10日~16日)に躍り出た(上述レポートをご参照ください)。 


2.『杜垃垃3:我在這戦闘的一年里』(杜拉拉3:私のこの戦闘の1年で)
李可・著 江蘇文芸出版社 2010年5月初


3.『色眼再識人』(“色眼”で再び人を知る)
楽嘉・著 天津教育出版社 2010年5月初版


話題書『色眼識人』の第2弾。サブタイトルに「性格色彩読心術」とある。「色眼」とは「人のカラー(色彩)を見分ける目」ほどの意味。
本書では、自分や他人の性格に基づく「性格カラー」を分析し、深層心理を知った上で、上司や顧客、ライバル、恋人、家族など、周囲の人たちとのよりよい関係構築法をさぐる。
「性格カラー」のチェックと解読の手帳つき。 


4.『藏地密碼8』(チベット・コード8)
何馬・著 重慶出版集団 2010年6月初版


チベット仏教1000年の秘史を尋ねる「百科全書タイプ」の長編小説。歴史、地理、科学といったさまざまな角度から、チベットの神秘のベールを剥がしていく。シリーズ全体では、売り上げ合計が300万冊を超えたという大ベストセラー。 


5.『好媽媽勝過好老師』(よい母はよい教師に勝る)
尹建莉・著 作家出版社


6.『低碳生活指南』(ローカーボンライフ指南)
中国21世紀議程管理中心など編 社会科学文献出版社 2010年4月初版


「低炭素経済」(ローカーボン経済)や「低炭素生活」(ローカーボンライフ)という言葉が中国でも話題になっている。二酸化炭素や汚染物質の排出を抑え、エネルギー消費の削減をめざす経済やライフスタイルのことだ。
中国でも2009年11月25日の国務院(政府)常務会議で「2020年までにGDP単位当たりのCO2排出量を05年より40~45%削減することを目指す」と決定している。本書はそれに基づく一般向けのエコライフ・ガイドとして発売された。
地球の気候変動、温室効果ガスなどの基礎知識をはじめ、「木綿や麻など自然素材の衣服を選ぶ」「衣服はできるだけ手洗いしよう」「太陽エネルギーを利用してお湯を沸かす」「旬の野菜を食べる」「節水のススメ」など、身の回りから取り組めるエコライフの知恵を紹介。 


7.『九種体質使用手冊』(9種の体質使用手帳)
王琦・著 北方婦女児童出版社 2010年5月初版


北京中医薬大学の王琦教授が、中医学をベースに人間の体質を「A~I」の9つに分類。その上で、それぞれの体質に適した健康養生法を解き明かす。
例えば、E型は「痰湿体質」であり、太りがちで、高血圧、冠状動脈性心臓病、糖尿病などを患いやすい。そのため食事療法や薬茶などを取り入れた体質改善を!と説く。
「自分の体質を知り、生命のパスワードを探し、健康的な体の主人になろう」と本書は伝える。 


8.『大懸疑』(大サスペンス)
王雁・著 大衆文芸出版社 2010年4月初版


人気のネット配信小説を書籍化。今年3月末に中国の店頭に並びはじめ、これまでに初版2万5000部が完売して、現在増刷中だという。
モンゴル帝国の初代皇帝チンギス・ハンと、そのシャーマンとの間で神権と王権をめぐる争いが起こった。残されたのが、神秘のラクダの皮の書物。
数百年後の現代、これを手にしようとコレクターや考古学者、ブローカー、投機家、盗掘者、法医学者、刑事らが百方手を尽くして追跡する。スリルとサスペンスに満ちた冒険活劇が繰り広げられていく。 


9.『歴史是個什麼玩意兒3』(歴史って何だろう3)
袁騰飛・著 寧夏人民出版社 2010年4月初版


10.『老実贏天下:趙章光評伝』(真面目さが天下に勝つ:趙章光評伝)
王春元・著 人民文学出版社 2010年1月初版


日本でも知られる漢方育毛剤「章光101」ブランドを生み出し、育毛の一大メーカーを築いた趙章光氏の評伝。
還暦を過ぎてなお、新ビジネスをはじめて成功し続けている趙氏。その長年にわたるビジネスパートナーや友人、部下たちに「なぜ、趙氏と101について行くのか?」と聞くと「温厚で、誠実だから」と口をそろえるという。
知られざる趙氏の人となりと、中国ビジネス史に刻まれるブランドの魅力を探る。 


 
     

 

 

文・写真 小林さゆり
日本の各種メディアに中国の文化、社会、生活などについて執筆中。
著書に『物語北京』(五洲伝播出版社)
訳書に『これが日本人だ!』(バジリコ)

 

  Blog: http://pekin-media.jugem.jp/
   
  b_u_yajirusi
 
 
     
   
中国・本の情報館~東方書店 東方書店トップページへ
会社案内 - ご注文の方法 - ユーザ規約 - 個人情報について - 著作権について